一気に暑くなり、5月とは思えないような気温が続いています。 このまま夏本番といきたいところですが、その前にジメジメした梅雨の季節がやってきます・・。 高温多湿の時期は、細菌の繁殖に適しているため、食べ物の衛生管理にも注意が必要です。
そこで、今回は食中毒についてお話したいと思います。
◆腸炎ビブリオ
お刺身など生の魚介類によって起こります。 生の魚介類を調理した後に調理器具や手に菌が付いていると 二次汚染を起こすこともあります。 また、他の菌に比べて2倍以上の早さで増殖します。
≪潜伏期間≫ 8~24時間。 短いと、2~3時間で発症する場合もあります。
≪主な症状≫ 激しい腹痛、水様性の下痢、発熱、嘔吐が見られます。
≪対策≫ 60℃、10分の加熱でほとんどの菌は死滅します。 塩分が存在する環境を好むため、魚介類は新鮮なものでも調理前に流水でしっかり洗って 菌を洗い流すのが有効です。 菌の増殖を抑えるために短時間でも冷蔵庫で保管することも大切です。 魚介類専用のまな板を使用し、洗剤でよく洗い熱湯やキッチン用の漂白剤で消毒して 二次感染を防ぎましょう。
◆ウエルシュ菌
カレーやシチュー、煮物など食肉類、魚介類、野菜が 含まれた加熱食品によって起こります。 室温での一晩放置や加熱後の長時間(2時間以上)放置、 不十分な再加熱が原因となります。
酸素がない所を好んで増殖します。 ところで、一般的な菌は熱に弱いので加熱が有効ですが、 残念ながらウエルシュ菌は熱に強い特性です。 どのようにして加熱に耐えるかというと・・ 居心地が悪い環境になると、菌は自身を殻で覆い、 「芽胞」と呼ばれる形に変化して生き残るんです。 なんと100℃、1時間の加熱でも死滅しません。 加熱に耐えて生き残った菌は、食品の温度が45℃程度まで下がると 芽胞から元の菌体に戻って再び増殖します。 そして、菌が付着した食品を食べると腸内で『エンテロトキシン』という 毒素が生産されて下痢などの症状を引き起こします。
煮込み料理は一晩寝かせたほうが美味しいと言われますが、 実は食中毒になる可能性が高いのです。
≪潜伏期間≫ 6~18時間(平均10時間)
≪主な症状≫ 主な症状は下痢、腹痛。嘔吐や発熱はないことが多いです。
≪対策≫ なるべく調理後はすぐに食べるようにしましょう。 常温での放置は、避けるのが先決です。 冷却は、粗熱をとり速やかに冷やすようにしましょう。(10℃以下が理想です)
一度、芽胞を作ってしまうと加熱しても死滅しません。 よくかき混ぜて鍋底にも空気を入れて加熱しましょう。 再加熱の時もよくかき混ぜて十分に沸騰させましょう。 保存は、小分けにすると早く冷やせて空気に触れる表面積が広くなるため、 増殖を防ぐことができます。
◆腸管出血性大腸菌
生や加熱不足の肉、生野菜などによって起こります。 実は、大腸菌のほとんどは無害ですが、中には激しい下痢を起こす 病原性大腸菌と呼ばれるものがあります。
その中で、腸管でベロ毒素という出血性下痢を起こす 毒素を作るものが「腸管出血性大腸菌」です。 一度は聞いたことがある人も多いO-157が代表的です。 他の菌に比べて感染力や毒性が非常に強いことが特徴です。 重症化すると溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こし、腎臓や脳に大きな障害が出ることもあります。
≪潜伏期間≫ 2~8日と長いです。
≪主な症状≫ 初めは、風邪のような症状ですが、その後、強い腹痛や下痢、血便が起こります。 熱が出ることは少ないです。
≪対策≫ 熱に弱く75℃、1分以上の加熱で菌は死滅します。 ハンバーグなどは、中までしっかり火を通しましょう。 調理の時は、食肉類が他の食品に触れないよう調理器具や保存容器を分けることも有効です。
以上、3種類の菌についてお伝えしました。
食中毒は、実際に家庭でも発生しています。
食中毒予防の3原則は、食中毒菌を「付けない、増やさない、やっつける」です。
3つの方法で実践できます。 ・付けない:手洗いや調理器具の洗浄を十分に行う ・増やさない:低温(10℃以下)で保存する ・やっつける:加熱する(75℃、1分以上)
それから、見落としがちなのがふきんやスポンジです。 菌が増殖しやすいので使用したらすぐに洗剤と流水で洗ってよく乾燥させましょう。 台所用漂白剤に一晩漬け込むとさらに効果的です。 これからの時期、食中毒にならないよう家庭での調理にも気を付けて過ごしていきたいですね。